春の到来を祝う縁起酒 立春朝搾り【旅のヒント】

2021年1月19日

 フードコーディネーターとして活躍しつつ、女きき酒師としても活動する早坂久美氏。日本酒と美味しい肴をこよなく愛する早坂氏が、日本酒の楽しみ方、食事とのマリアージュに関する豆知識をシリーズでお送りしていきます。
 シリーズ3回目となる今回は、春の到来が待ち遠しくなる<立春朝搾り>がテーマです。いったいどんなお酒なのでしょうか?

 2月4日は“立春”。
 二十四節気で春の始まりを意味するこの日は、日本酒業界における一大イベントがある日でもあります。日本酒好きならご存じの方もいらっしゃるかと思いますが…全国一斉に「立春朝搾り」が発売される日なのです!!
 「立春朝搾り」とは朝搾ったばかりの生原酒をその日のうちにお客様のお手元にお届けする“祝い酒”のこと。日本名門酒会が日本酒の品質向上を目的として1998年から始め、2021年は全国44の蔵元が参加する予定になっています。

 

杜氏さん泣かせの酒「立春朝搾り」

 朝搾ったばかりのお酒をその日の内に味わえる“究極の絞りたて”である立春朝搾り。
一切火入れをしない生原酒なので、蔵元でしか味わえないフルーティーな香りと躍動感あふれるフレッシュな味わいが楽しめます。 日本酒ファンや飲み手にとっては楽しみなお酒ですが、実は“杜氏泣かせの酒”とも言われています。何故ならお酒というのは生き物で、菌を育てながら“美味しいタイミング”を見極めて搾るもの。
 しかし、出荷日が2月4日に決まっているため「よし!」という最良のポイントをそこにピタリと合わせなければならない。早過ぎても、遅くてもダメなのです。そのため蔵人たちは昼夜問わず温度管理や櫂(かい)入れをするなど、工程ごとに緻密な管理を行い、非常に神経を使いながら造られています。

 

酒蔵と酒屋の協働で生まれる地域限定酒

 その日の内に「立春朝搾り」を飲んでいただくために、蔵元近郊のお酒屋さんも蔵へ駆けつけ、ラベル貼り・出荷作業のサポートを行います。注文分のお酒を直接蔵から運び出し、お客さまにお届けする、という協力体制になっているのです。
早朝の暗く寒いうちから始まった作業が無事終わると、地元の神主さんによるお祓いが行われます。搾られたお酒、そして蔵元・酒販店関係者が一緒になり、今年一年の幸運と繁栄への祈りを込めるのです。全ての作業を終えたお酒屋さん達は “また来年”と挨拶を交わしながら各店に散らばっていきます。

 立春朝搾りの人気が高い理由は“当日搾り”というお酒自体の魅力や付加価値はもちろんのこと、それ以上に“お酒を造る人・届ける人・飲む人…が一緒に春の到来を祝う”という想いが込められている地域のイベントだからではないでしょうか。

“2月4日 立春の朝搾る”文字で表せばこれだけのことですが、その1本の瓶の中には酒蔵と酒屋の協働で生まれる想いが、ぎゅっーと詰まっています。単なる“搾りたての新酒”に留まらない“地域共感酒”として20年以上愛され続けてきた背景がここにあるような気がします。

 ちなみに私が暮らすここ宮城県では、日本名門酒会に加盟する大崎市の「一ノ蔵」が毎年実施しており、かくいう私も数年前に参加させて頂いたことがあります。その様子を少しだけご紹介しますね。


朝6時、蔵に集合。全員でラジオ体操からスタート!
作業前に搾りあがったばかりの「立春朝搾り」をいただきました。


酒販店ごとのテーブルに分かれ 黙々とラベル貼りの作業を行います。


作業完了後は皆で朝食を囲みます。労働の後のご飯は格別に美味しいものでした!

 

 昨年に引き続きコロナ禍でいろいろと辛い状業が続いております。酒蔵にとっても飲食店の営業自粛やイベント中止などが相次ぎ、日本酒をなかなか出荷できない状況です。私たちができること…直接は会いに行けなくても、その酒蔵のお酒をいただくことが応援になると信じています。
 春の到来と酒蔵の明るい未来を願いながら、立春朝搾りをいただいてみませんか?

 

◆プロフィール
早坂 久美(はやさか くみ)/プランニングルーム エムピー
女子美術短期大学卒業。凸版印刷(株)東北事業部販売促進部にて、15年間食品をメインにした企画業務に携わり、2001年フリーに。食プランニングのスキルをベースに、フードコーディネーターと唎き酒師、日本酒学講師の資格を生かした活動をしています。
フードプランナー(宮城県6次産業化プランナー登録)/唎き酒師・日本酒学講師(SSI認定No.161)/フードコーディネーター3級/みやぎグリーン・ツーリズムアドバイザー

※活動内容の詳細はこちらから
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