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【仙台作並「アルベロ」髙橋康さん】洗練された深い味わい。野菜が主役の石薪窯ピッツァ&菜食イタリアンはいかが

アルベロピザ

 

広瀬川に沿うように上流へ、仙台から山形に向かう国道48号線を進むと白い一軒家の佇まいがおしゃれな「アルベロ」があります。2012年のオープン以来、石窯で薪を使って焼き上げるナポリピッツアをはじめ、肉や魚を使わず、たっぷり多彩な野菜使いで表現する菜食イタリアンの美味しさに、遠方から訪れるファンも多い店です。

日々食べるものが心身の健康に繋がるということ

「料理人として、今、美味しいというだけでなく、長く健康でいて欲しい。食べてくれる人に長期的な幸せを提供したいと思っているんです」と、穏やかな雰囲気で話すオーナーシェフの髙橋康さん。

アルベロでは、卵と乳製品以外は肉や魚など動物性の食材を使っていません。例えば魚介は、食感の似ているキノコ、肉の野性味は土の香のするゴボウやビーツに置き換えるなど、野菜の組み合わせやハーブ&スパイスで表現しています。野菜をたくさん食べようと思ってもなかなか難しいものですが、同店ではランチでも20品目くらい野菜がとれるメニューも。味わい豊かで満足感がありながら、食べた後、身体に軽やかさを感じるような料理です。

「こんな店があってもいいですよね。ちょっと野菜が足りてないなと思ったときに来てもらえれば」

野菜は産直や、有機・無農薬で野菜を育てている思いの深い契約農家さんからのものが中心。最近は店の近くの農薬不使用の野菜を作る小さな生産者さんたちを取り扱う「作並農園」とのつながりができたので、より地産地消に近づいたそう。

「地場の野菜を食べることで、自分の身体を整えることができるそうですよ」と髙橋さん。地場で取れた新鮮な野菜を食べることは栄養の点からもサステナブルな観点からもお薦めですが、さらに風土にチューニングするイメージでしょうか、「自分と土地との周波数を合わせる」といった意味もあるとか。古くは「身土不二」(食べ物は土から生まれ、我々の体になる。自分の住む風土と体は密接に関係し合う)という考え方がありますが、「分子栄養学」など科学的に証明され始めている…と話します。

アルベロ髙橋さん

「栄養士だった母の影響で、子どものころから何をどう食べるかといった食に関心が高かった」と髙橋さん

イタリアンの野菜使いとナポリピッツァに魅了され

髙橋さんは、高校卒業後、大手電機メーカーに就職。安定した仕事に就いたものの、「人生に悔いを残したくない、本当にやりたいことに向かって努力しよう」と思い直し、もともと興味のあった料理の世界を目指すことに。当時19歳。30歳までに自分の店を持つことを決めたそうです。そうして「パスタハウス」(仙台市青葉区)をスタートに飲食業に入ると、もっとイタリアンを深く学びたいと、東京の本格イタリアン「リストランテ山崎」(港区南青山)へ。野菜使いが得意な濱崎龍一シェフ(当時)のもとで料理を学びました。その後、ナポリピッツァ「ラ・ベファーナ」(世田谷区下北沢)で、石薪窯で焼き上げるピッツァの魅力にすっかり魅了された髙橋さん。イタリアにも数カ月ほど訪れ、パスタの町として知られるイタリア・グラニャーノにある店や、「PIZZA a metro」と呼ばれる1mもある窯焼きのピッツァの店で、本場の技と食文化を体験します。

アルベロ髙橋さん

マンマの料理の、シンプルなのに深みのある美味しさ。楽しそうに食事する家族や、店の人がお客様とフランクに会話する様子…。「これまでやってきたことを確認できただけでなく、お客様の接し方としてもっと一緒に楽しんでいいんだと肩の力が抜けましたね。何より食と人生を楽しんでいるイタリアの人は魅力的でした」

帰国後はラ・ベファーナを経て、当時、野菜料理をメインにしていた「チェントルーチ」(世田谷区三軒茶屋)でさらに腕を磨きます。そして30歳のとき、自然が豊かな場所で、野菜の素晴らしさを伝えたいという思いを叶え、アルベロをオープンしました。

味と香りを重ねた深い旨味をカジュアルに楽しむ

アルベロパスタ

桜の木やピートで燻製を掛けた「定義山の三角油揚げ」入り。

ここでアルベロの料理とお酒のペアリングを紹介しましょう。まずは「燻製油揚げのプッタネスカ」。燻製した油揚げがパスタの具材に!?とちょっと驚きな一品。プッタネスカはトマトベースにオリーブやケイパーを加えたシンプルなパスタですが、ここに、作並名物・定義山の三角油揚が仲間入りしています。野菜だしとハーブ入りのなんとものど越しの良いトマトソースに、ふわりと香る燻製香。ときにサクサク、ときにしっとり味の染みた油揚げは楽しい食感。パスタはイタリア伝統製法で作られた小麦の香りや味わいも深いこだわりのパスタを使用。ソースが良く絡み、もっちりとして食べ応えがあります。

ヤマソービニヨン

ヤマソービニヨンは山ぶどうとカベルネ・ソービニヨンを交配して生まれた品種

合わせるのは、秋保ワイナリー(仙台市太白区秋保)の「ヤマソービニヨン2020」。果実のやさしい渋みとすっきりした酸味、見た目の色合いほど重すぎず、トマトソースの旨味と酸味に合います。ヤマソービニヨンの独特な香りも燻製香と良い調和です。

イワシ風ベジフライとフェンネルのトマトソース

自家製の辛味オイルをかけてどうぞ

もう一品、石窯で薪を使って焼くナポリピッツァは「イワシ風ベジフライとフェンネルのトマトソース」を。豆腐や海藻を使ってイワシ風に仕立てたベジフライがトッピングの主役です。トマトソースとモッツァレラチーズに、フェンネルやバジルのほか、松の実やレーズン、青レモンピールなど味と香りのアクセントが楽しいピッツァ。香ばしくパリっと&もっちりした生地は、薪の香りもごちそうです。

カフェジン

穀物由来のまろやかな甘みと香りは、ニッカならではの希少なカフェスチルでの製法によるもの

こちらには、作並にあるニッカウヰスキー仙台工場宮城峡蒸留所のカフェジンを使ったジントニックを合わせていただきます。柚子や甘夏、かぼすなどのさわやかな和柑橘やスパイシーな山椒、りんごなどを使用した奥深い味わいのジンです。

ナポリではピッツァにシュワシュワ発泡のドリンクを合わせるのが定番だとか。フェンネルの香りとジントニックのさわやかなシトラスがハーモニーを生むペアリングです。

大樹のように地域に根差して。食でみんなを笑顔にしたい

アルベロ

アルベロでは、コロナ禍に入ってから「ヴーガンピッツァ」や「ベジタリアンピッツァ」の冷凍発送と冷凍パスタ+ソースの発送をするようになりました。ベジタリアンやビーガンといった食は、主義としてのものととらえられがちですが、近ごろはシンプルに健康を考えた料理として楽しむ人が増えています。もちろんビーガンやアレルギーを含め、いろいろな理由で外食時の選択肢が少なく困っている人など、県外からの注文も多いそうです。

「どんな人もみんなで食卓を囲んで楽しく、美味しく食べることがいい食事なのだと思います。料理人として、その手伝いをもっとしていきたい」

オープンから10年が過ぎ、地域のことにも広く目を向け、関わっていく余裕が出てきた…とのこと。2016年には地域を盛り上げようと、同店から国道48号線を山形に向かった先の「湯の町作並観光交流会館ラサンタ」内にアルベロカフェをオープンしました。

ゆっくりと大地に根を張り、少しずつ幹を太くして枝を伸ばしていく様子はまさにアルベロ(樹木)。穏やかな自然の恵み、五感を研ぎ澄ます季節の彩りを味わいに訪ねてみませんか。

基本情報
施設名
アルベロ -L'Albero-
所在地
仙台市青葉区上愛子白沢23-1
電話番号
022-392-9570
定休日
木曜定休※木曜日が祝日の場合営業
備考
11:00-21:00 ※水曜は16:00まで

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