秋保ワイナリー・毛利親房さん ”テロワージュ”が目指すもの【インタビュー】

2020年7月28日

 

秋保ワイナリー 代表取締役・毛利親房氏(宮城県仙台市・秋保ワイナリーにて)

 

 「東北・美酒と食のテロワージュ」で掲げている「テロワージュ」という言葉。初めて聞いたようでいて、馴染みがあるようにも思われるかもしれませんが、実はこれ、テロワール(生産地の気候風土と人の営み)と、マリアージュ(食事と酒のペアリング)を合わせた造語で、本サイトでは生産地ならではの食をより豊かに楽しむ観光プログラムとして提案しています。この言葉の生みの親は、2015年に仙台初、そして震災後の宮城県で最初にオープンした秋保ワイナリーの代表・毛利親房さん。「テロワージュ」が生まれた経緯や現状、今後のテロワージュの展望を伺いました。

 

「テロワージュ」が生まれた背景とは?

 ワインは食中酒なので、合わせる料理が欠かせない。なので、震災後の県内で初となるワイナリーを計画する際に、宮城県産のワインができれば、宮城ならではの食の魅力として発信できるとイメージしていました。津波で被災した宮城県南三陸町の牡蠣の漁師さんと「南三陸の牡蠣と合わせた宮城県産ワインで、同じテロワールの相性を楽しんでもらえたら楽しいね」と復興に向けた未来を語り合ったことで、自分がつくるワイナリーの役割を確信したんです。

東北にはもともと、世界に誇れる美味しい食、酒、豊かな文化が存在する。それを「テロワージュ」という言葉で表現した

 

 同時にワインツーリズムの構想があり、仲間を増やそうとワイナリーの担い手育成事業も請け負いました。ワイナリーを巡って地域の食とのマリアージュを楽しむ旅のスタイルを広め、国内外から人を呼びたい。そうすればさまざまな人や産業が関わる地域振興につながっていくはずと思っていました。

 2016年だったと思いますが、(もとは)ワイナリーを核とした、産地ならではの食の楽しみ方として「テロワージュ」と表現しました。活動するうちに米どころの宮城県は古くから日本酒の蔵も多く、ビール工場もウイスキー工場もあると気が付いた。地酒全体に目を向ければ楽しみの幅も広がります。いろいろな方々の協力も得て、さらに東北地方一体となってインバウンドとして世界に大きくアピールしようということに。「東北・美酒と食のテロワージュ」はそうした経緯で生まれた取り組みの一環です。

「究極の美味しさは、産地にあり」というテロワージュの理念は多くの賛同者を集めている

 

テロワージュ事業に賛同する仲間も増えてきました。今後の展望は?

 担い手育成事業から起業したワイナリーの仲間も増え、宮城をはじめ東北の各地域で旅行会社やシェフ(飲食店)、生産者、酒蔵など「テロワージュ」に関わる人の輪が広がっています。ちょうど点と点が繋がり始めたところ。今後は、“点”である地域や人、企業ごとにそれぞれの内容を魅力的に高めていくことです。

 秋保地区でいうと、今後ワイナリーが増え、ブルワリーもできます。「ワイナリーの存在は、歴史ある温泉地の秋保に食の意識の高い客層を呼び込めるはず」と想定していた通り、観光拠点の1つとして役割を果たしていると感じます。地域に新しく参入してくる店も増え、新しいプロジェクトとして農家や工芸家、飲食店、食品加工業や旅館などと一緒に秋保の新たな価値を見出す連携を始めました。また宮城県では、仙台・名取ベイエリア地区のテロワージュツーリズムも、酒蔵など民間企業や行政と連携してスタートします。

 震災直後からワイナリー構想を掲げ、一度は断念しながらも2014年に最初の苗を植えることができました。振り返れば醸造も栽培も試行錯誤で、あっという間に過ぎた印象です。今年のブドウの出来にはこれまでになく期待していますし、ワイナリーに託した地域振興は今、「テロワージュ」を核に、ようやく盛り上がってきたという思いですね。

 秋保ワイナリー・毛利親房さんの想いも、ぶどうと共に実り、ワインと共に熟成していく。今後も「テロワージュ」の活動から目が離せない。

 

◆毛利親房(もうり・ちかふさ)

1968年アメリカ・シアトル生まれ。7歳で帰国(宮城県仙台市)。東京で学生時代を送り、2003年に仙台に戻り、設計事務所に勤務。2014年に起業のため退職。2015年秋保ワイナリー(仙台秋保醸造所)設立。

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