仙台の中心部から車を走らせること、わずか30分。たどり着いたのは、奥州三大名湯・秋保温泉です。都会の喧騒を離れ訪れたこの地には、名取川に侵食された奇岩が独特の造形美を誇る磊々峡やゴウゴウと大きな音を立ててしぶきを上げる秋保大滝など、自然がつくりだしたダイナミックな景観を愉しむことができます。
全国にその名を知られる秋保(あきう) 温泉郷。“仙台の奥座敷”と呼ばれ、伊達政宗公も愛した名湯は、今なお多くの人を引き付けています。
ここ数年でワイナリーやカフェなどが続々とオープンし、新たな魅力も発信している秋保で、創業53年を数えるの温泉旅館が「篝火の湯緑水亭」です。
美しい日本庭園に囲まれた緑水亭
ひときわ高い丘の上に鎮座する宿からは、秋保の温泉街を眼下に望むことができます。また、3万坪という広大な庭園には、散策路が整備され、春には300本の桜、初夏の新緑、盛夏の深緑、秋の紅葉、そして冬には水墨画のような雪景色で旅人をもてなしてくれます。
幻想的な雰囲気で旅人を魅了する「篝火の湯」
また、緑水亭を語る上で欠かせないのが、広大な敷地を活かして設えられた露天風呂「篝火の湯」。大浴場から長い階段をくだり、野趣あふれる大自然の中で歩を進めると、見えてくるのは、ダイナミックな石組みと流れ落ちる滝、そしてそれらを幻想的に照らし出す篝火。若女将の高橋知子さんは「四季折々の景色をお風呂でも楽しんでいただけます。私のおすすめは、なんといっても初夏です。美しい新緑をぜひ満喫してほしいです」と話します。
旬の贅を尽くした、「春の御膳」。デザートも調理長・安彦さんの考案です
秋保の里の景観を愉しむことができる食事処では、季節の食材にこだわった、調理長・安彦具視さん自慢の品々が食卓を彩ります。
安彦さんは「地産地消、そして季節の食材にこだわって一品一品丁寧につくっています。秋保は山の中ではありますが、三陸の海も近く、新鮮なお魚も手に入るんです。お造りには、仙台近郊で水揚げされた新鮮なお魚をご用意しています」と。聞けば、安彦さん自ら産地を訪れ、その目利きで食材を仕入れているそう。「最近、温暖化のせいか、三陸で鰆があがるようになったんです。これまで、鮮度の問題から仙台で鰆を刺身で食べることは考えられませんでしたが、今はそれができてしまう。脂の乗った鰆を少し炙ってお出ししていますので、ぜひ召し上がってみてくださいね」。
まさに職人気質の安彦さん。その目には、料理人としての矜持が浮かんでいました
和食一筋で45年にあるという安彦さん。旬の食材のよさを引き出すだけでなく、その見た目でも、客人を愉しませてくれます。例えば、春の御膳の前菜で供される「蕨かます磯辺焼き」は、かますを蕨の形に。魚で山菜を表現したその粋な計らいに、思わず口の端が上がることでしょう。
また、吸い物には目にも春を感じる蛤と、贅沢にも雲丹を使用。さらに食事も北寄貝と雲丹という、産地ならではの贅を尽くした海の幸が並びます。
盛り付けも美しい安彦さんのお料理
もちろん、魚だけではありません。仙台が全国に誇るA5ランクの「仙台牛」もフィレステーキで提供。安彦さんは「魚だけでなく、お肉も仙台のものを味わってほしいです。また、春には山菜を使ったお料理も提供していますが、この山菜は敷地内で取れたもの。新鮮な山の幸も堪能してください」と話してくれました。
秋保の環境保全米を使用した「あきうまい」は、秋保温泉郷でしか味わえない酒
こうしたお料理に合わせたいのが、秋保地区で栽培された環境保全米である「秋保米」を、伊達家お抱えの蔵元である勝山酒造が醸した純米酒「あきうまい」。高橋若女将は「辛口でスッキリと飲みやすく、食中酒にぴったりのお酒です。仙台牛のフィレステーキや、鰆の炙りなどの脂をスッと流してくれるだけでなく、食材の持つ香りをグッと引き立ててくれますよ」と教えてくれました。
また、高橋若女将は「当旅館では、お部屋食にも対応しています。古き良き日本旅館のスタイルも維持していきたいと思っているんです」と話してくれました。
若女将と調理長、そしてスタッフ全員一丸となって緑水亭を盛り上げていきます
そして「当旅館では、夕食だけでなく朝食も高い評価をいただいております。毎年、秋保の女将衆でつくっている味噌を使った味噌おにぎりが大人気です。いつも売り切れてしまうほどの人気なので、ぜひみなさんに召し上がっていただきたいです」と。
この味噌は、さまざまな料理の味付けや隠し味にも使用されており、且つ、売店でも販売されているそうなので、ぜひチェックを。
さらに緑水亭でユニークなのが、「Beer Bar 麦酒家(びーるや)」。イギリスのアンティークを設えたバーでは、緑水亭のアイコンである篝火にインスパイアされた、オリジナルのビール「kagaribi」を提供。オリジナルブレンドのビールは、篝火のごとき色を表現しています。高橋若女将いわく「チェックインして、お部屋に行く前に一杯、二杯と召し上げるお客さまもいる」のだとか。
実際に味わってみると、見た目ほど重くなくすっきり軽い飲み口なのに、しっかりとコクがあるという、奇跡的な美味さ。夕食時の食事処や部屋にもデリバリーしてくれるそうなので、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
高橋若女将は「こんな時代ですが、温泉で体を温めることは体の免疫力を上げることにもつながります。おいしいものを食べて、温泉に入って、家族や大切な人との時間を過ごしていただけたらうれしいです」と。
緑水亭を堪能して翌朝チェックアウトしたら、高橋若女将おすすめの「磊々峡」へ。遊歩道も整備されているので、ダイナミックな景観を目の前にした散策が楽しめます。
また、旅館すぐ近くにある「秋保ワイナリー」では、秋保で育てられたぶどうを醸したワインも購入可能。さらに、「秋保ヴィレッジ」などで産直野菜を購入してお土産にするのもおすすめですよ。