ふくしまテロワージュ・北村秀哉さん テロワージュで語る豊かな福島【インタビュー】

2021年2月5日

 「テロワージュふくしま」は、福島のお酒と料理のマリアージュを地域の魅力として発信していこうと、2019年10月にふくしまワイン広域連携協議会と福島民友新聞社が実行委員会を発足。「究極の美味しさは産地にあり」を合言葉に、福島県内での普及活動のほか、2020年1月にパリでの福島食材キャンペーンを行うなど海外での活動も注目されています。福島ならではのテロワージュの取り組みとは。発起人であり実行委員長の北村秀哉さんにお話を伺いました。

福島の豊かな食をPRするテロワージュで地域貢献を。情熱をもって活動に取り組む北村秀哉さん(右)

 

テロワージュふくしまが生まれた背景とは

 福島県には現在、二本松市、郡山市、会津若松市、いわき市、川内村などにワイナリーがあります。県内各地にワイナリー設立の動きが出たのは、宮城県と同じく震災後のことです。もともと果樹栽培が盛んな地域なので、ブドウ栽培にも取り組みやすく、全国的な日本ワイン人気によるワイン用ブドウの需要を見据えた栽培も増えています。

 私は5年ほど前から双葉郡川内村の「かわうちワイン」の設立に関わってきました。ブドウ栽培からワイン製造まで村で取り組む復興再生事業として、昨年会社を設立し、現在ワイナリー設立に向けて進めています。実は私の本職は東京電力ホールディングスの社員で、復興の職務を担い福島に赴任しました。福島は以前にも住んだことのある馴染みのある土地であり、震災でご迷惑をかけた思いもあって、仕事だけでなく個人として地域貢献に取り組みたいと思っていたんです。 フランス・パリに駐在していた20年ほど前、ワインの魅力に目覚めて以来ずっとワイン好きだったこともあって、自然も農産物も豊かな福島なら、ブドウ栽培からのワインづくりが可能だと思い立ちました。ワインにすれば付加価値が付き、また放射能の心配なく販売することができます。何より、ワイナリーには夢がある。苗木からの栽培は時間が掛かりますが、じっくり取り組む東北の人に向いていると思いました。そこで双葉郡川内村役場に一緒にワインづくりをしようと声を掛け、「かわうちワイン」プロジェクトとして苗木を植えることからスタートしました。 その取り組みの中で、宮城県の震災後のワイナリーの先駆者として活躍する秋保ワイナリーの毛利親房さんに会う機会がありました。

 3~4年前だったと思いますが当時すでにテロワージュの概念があり、話を伺うと自分の目指す先のビジョンを見せてもらったように思いました。テロワージュという言葉の響きもいい…そう伝えたら、ぜひ福島でもやってくれと。それがきっかけです。 福島県各地でのワイナリー設立の動きの中で、ワイン用ブドウの栽培技術やワインの醸造技術をみんなで一緒に学んでいこうと「ふくしまワイン広域連携協議会」が発足しました。私が事務局長に就いていたこともあり、発信力のある福島民友新聞社と組んで、テロワージュふくしまを立ち上げたんです。

 

福島ならではのテロワージュの進め方とは

 テロワージュのお酒は特にワインに限らないということだったので、すぐに魅力を発信できる日本酒を主軸にすることにしました。福島には日本酒、ワイン以外にビール、ウイスキー、焼酎などの地酒が揃いますが、福島の日本酒は、毎年行われる全国新酒鑑評会で史上初の7年連続金賞受賞蔵数1位(平成30年度)になるほど質が高いんです。蔵も各地域にあって数も多いので、日本酒にけん引してもらう形で飲食店や宿泊施設に声を掛け、「テロワージュ」の考え方を広める発信をWEBを中心にしているところです。  

 ローカルな食材とローカルなお酒。その土地でしか味わえないマリアージュがある…。テロワージュは新しい価値観であり、新しい可能性を秘めている取り組みだと思います。私たちは「究極の美味しさは産地にあり」と表現していますが、その土地の旬の素材、新鮮な素材を、地元のお酒と合わせて楽しめる。地元の飲食店だからこそ叶う楽しみとしてPRしていく。福島の人たちにとっては当たり前のことかもしれませんが、飲食店や生産者、蔵元がすぐ近くにいてつながりがあるというのは、地方ならではの強みです。東京出身の私からみると、福島の人の遠慮がちな気質もあると思いますが、まだその強みをあまり積極的にPRしていないのが現状。私たちは、テロワージュがそうした今ある地域の魅力を高め、生かしていく取り組みであることを伝え、一緒に取り組む仲間を増やすところから始めています。

2019年秋のキックオフイベントで。一緒に福島食材の魅力をテロワージュとして表現していく福島のシェフたち

 

未来のテロワージュへ向けて。海外での反応は?

 一方でテロワージュふくしまとして特長的なのは、海外でのPR活動です。2020年1月にパリの日本文化会館で2週間、福島の食のキャンペーンを行いました。現地の人の日本酒への反応が非常に良く、手応えを感じました。今度はマリアージュを体験してもらおうと、この秋、現地の日本人シェフのいる星付きレストランで日本酒を楽しむイベントを行います。また、もっと気軽な場としてフィッシュマーケットにバーを設け、日本酒そのものの味わいのほか、生ガキやお刺身など生ものとの相性の良さをその場で体験してもらう企画も立てています。  

 コロナ禍で制限があるので、まずは福島の日本酒を好きになってもらい、継続していつも手に入るよう輸出量を増やすことを考えたいですね。ファンづくりから始め、将来的に福島に来てテロワージュを体験してもらう…。そんな未来を描いています。今後、テロワージュ東北として東北一体になって行う形にしてもいいですね。

 「テロワージュで地域の可能性を掘り起こす 」福島は魚、果樹、米、肉など多種多様な食材が豊富。原発事故で試験操業が続きましたが、いわきの漁港にあがる「常磐もの」は、震災前は築地でも高値で取引されていたものです。質の高い福島食材の魅力をどんな料理で見せていくか。料理人たちと一緒に、これまでの郷土料理のような素朴な料理だけでなく、県内外、国内外の来訪者にアピールできる新しいものを作っていく必要もあると感じています。  

 ツーリズムはこの秋以降3本予定していますが、例えば日本酒の蔵元を訪ねるにも「日本酒の仕込み水の水源を歩く」など、単なる蔵見学ではなく自然の豊かさを感じられるローカルツーリズムの発掘を目指したい。県内の人も知らない、まだ体験していない楽しいスポットもあるので、一度のイベントで終わらせず、福島の「テロワージュ」として紹介できるガイドブックを作成するなどじっくり育てていきたいと思っています。  

 今後、テロワージュの取り組みが東北に広がり、東北周遊や復興の地を巡るなどいろいろな切り口でコンテンツが生まれるでしょう。新幹線の場合は東北の玄関口としてどこに行くにも福島を通りますが、それを生かして必ず立ち寄ってもらえる地域にしたい。食の豊さはもちろん、自然や文化、人の魅力など福島のテロワージュを存分に楽しめるようみんなで総合力を高めていきたいです。

2020年パリでの福島の食のPRイベント。料理や日本酒を体験した来場者は、食の生まれた気候風土にも関心を寄せてくれた

日本酒への興味関心の高さに、今の福島のテロワージュのけん引役と確信したと北村さん

 

◆北村秀哉(きたむら・ひでや)

1961年生まれ、東京都出身。 テロワージュふくしま実行委員長。 東京電力株式会社福島復興本社の復興事業に関わりながら、ライフワークとして食事業での福島の地域貢献に携わる。「かわうちワインプロジェクト」発起人。ふくしまワイン広域連携協議会事務局長。 20年来のワイン好きだが、現在、福島の日本酒の魅力に強烈に引き込まれている。

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